シュコダ 1100スーパースポーツ(1971 チェコスロバキア)

シュコダ

1971年に試作車として発表された「シュコダ 1100スーパースポーツ(開発コードタイプ724)」は、チェコスロバキアのAZNP(現シュコダ・オート)がクヴァシニ工場で開発した実験的スポーツカーである。量産クーペ「110 R」の主要構成部品を活用しつつ、本格的なスポーツ走行を想定した実証モデルとして企画された。1972年のブリュッセル・モーターショーで初公開され、白を基調とした先鋭的なウェッジシェイプとFRP製車体により冷戦下の東欧圏において大きな注目を集めた。

動力部には、ラリー競技で実績を積んだ排気量1,107ccの水冷直列4気筒OHVユニットを搭載。量産車とは異なり、エンジンを後車軸の前方に配置する後輪駆動(後部ミドシップ)レイアウトを採用した。ツインキャブレターとの組み合わせにより73psのパワーを発揮し、のちに排気量を拡大したラリー用ユニットへの換装でパワーは100ps超に向上。4速マニュアル変速機を介し、車重約900kgの軽量車体を時速200km以上へと到達させるポテンシャルを秘めていた。

車体構造にはグラスファイバー(FRP)が多用され、低い車高と先鋭的なノーズが形成された。最大の特徴は乗降機構にあり、通常のドアではなく、フロントウィンドウ、ルーフ、サイドウィンドウが一体となって前方に跳ね上がるキャノピー構造を採用。格納式の薄型リトラクタブルユニットには6灯が埋め込まれ、後部には多数の丸型ランプが水平に並ぶなど、未来的かつ実験的な造形が凝らされた。

量産化には至らず1台のみの試作にとどまったものの、走行試験では最高速度211.8km/hを記録し、優れた運動性と空力性能を実証した。1980年代初頭には劇中車として外観を黒基調へ改修される経緯を辿るが、本モデルの根底にあるのは社会主義体制下の厳しい制約の中で技術陣が追求した純粋なスポーツカー構想である。孤高のプロトタイプとして、現在も同社の公式博物館に大切に保管されている。

関連ブログ

シュコダ 110R(1970-1980 チェコスロバキア)
1970年にチェコスロバキアの国営メーカーAZNP(シュコダ)が発表した「シュコダ 110R」は、クヴァシニ工場で生産された2ドアクーペである。大衆向け4ドアセダン「100/110」シリーズをベース車両としながら、美しいファストバック形状の…

画像ギャラリー

タイトルとURLをコピーしました