タタ ナノ(2008-2018 インド)

タタ

2008年1月のニューデリー・オートエキスポで初公開された「タタ ナノ」は、インドのタタ モーターズが二輪車に乗る一般家庭へ安全な移動手段を提供することを目的に開発した超低価格のスモールカーである。タタ財閥総帥のラタン・タタが掲げた「10万ルピー(約25万円)の国民車」構想のもとで計画が推進され、徹底したコスト削減と効率的なパッケージングにより、世界的な注目を集めて世に送り出された。

車体は大人4人が乗れる居住空間を確保するため、全高を高めに設定したトールボーイスタイルを採用。コスト削減と軽量化のため、フロントガラスのワイパーは1本とし、ホイールボルトも1輪あたり3本へと簡素化された。さらに初期型では後部外側に開口するトランク開口部を廃止し、荷室へのアクセスを後席背もたれの前倒しに限定するなど、部品点数と構造の徹底的な絞り込みが行われた。

動力部には、新開発された排気量624ccの直列2気筒SOHCを車体後部に搭載し、(35ps/5,250rpm、4.9 kgm/3,000rpm)を発揮。変速機には4速マニュアルを組み合わせ、後輪を駆動した。操舵系はパワーステアリングを持たない直接的なマニュアル式とし、制動装置には4輪ドラムブレーキを採用。軽量な車体重量を活かし、過密な都市部での実用的な走行性能と優れた燃費効率を追求した。

当初は爆発的な予約を集めたものの、工場の移転問題による供給遅延や初期トラブルの風評が販売に影を落とした。また「最も安い車」という宣伝が、向上心を持つ新興国の購買層にとって所有欲を満たしにくいイメージとして受け止められ、需要は次第に低迷。改良型や装備の拡充を図ったものの販売は回復せず、2018年に生産を終了。低価格化を突き詰めた革新的な工業製品として、自動車産業史に大きな議論と足跡を残した。

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