1979年春に1980年モデルとして登場した「シボレー サイテーション」は、ゼネラルモーターズ(GM)の命運を懸けた前輪駆動コンパクトである。旧態化した後輪駆動車ノバの後継として新規開発された「Xボディ」を採用し、シボレー初の横置き前輪駆動車となった。このXボディからは、ポンティアック フェニックス、ビュイック スカイラーク、オールズモビル オメガといった各部門の兄弟車も同時に展開された。石油危機に伴う燃費規制への適応を目指して小型軽量化が図られ、前身より約360kgの軽量化を達成。実用的な2ドアクーペに加え、3ドアおよび5ドアのハッチバックが設定された。
車体前方に横置き搭載された動力源は、2.5リッター直列4気筒(90hp)と新開発の60度バンク2.8リッターV型6気筒(115hp)である。前輪ストラット、後輪ビームアクスル式の懸架装置を採用。当初から設定されたスポーティ仕様「X-11」には専用足回りが与えられ、1981年モデルでは135hpを発揮する高性能版V6が追加投入された。特筆すべき点として、この前輪駆動用のサブフレーム、駆動系、動力ユニット一式は、後に登場するスポーツカー「ポンティアック フィエロ」の座席後方にそのまま移植され、コストを抑えて量産ミドシップ構造を実現するための基盤技術として転用された。
効率的な室内設計と経済性が支持され、初年度だけで80万台以上を販売して全米首位を獲得した。しかし拙速な開発が災いし、後輪ブレーキの早期ロックによるスピン傾向や操舵系の不具合など初期不良が多発。米運輸省道路交通安全局(NHTSA)との大規模なリコール訴訟へと発展した。この法廷闘争は1987年に政府側の請求が棄却され、法的にはGM側の勝訴で終結した。
1984年には改修を施した「サイテーションII」へと改称を図ったものの評判の回復には至らず、1985年に累計約164万台で生産を終了した。商業的な光と影を残したものの、巨大メーカーGMが本格的な前輪駆動化とダウンサイジングへと大きく舵を切る契機となった転換点として、また合理的なミドシップスポーツを生み出す技術的母体となった点も含め、アメリカ自動車史に深く刻まれている。

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