マセラティ クアトロポルテ(1979-1990 イタリア)

マセラティ

1979年に量産が開始された第3世代「マセラティ クアトロポルテ」は、アレッサンドロ・デ・トマソ率いる新体制のもとで誕生した大型高級スポーツサルーンである。前世代の商業的頓挫を乗り越えるべく開発され、デザインはジョルジェット・ジウジアーロが主宰するイタルデザインが担当した。1976年に発表された試作車「メディチII」で提示された直線を基調とする折り紙細工のような造形を色濃く反映。厚みのあるノーズや直立した格子状グリルを備え、最高級サルーンに相応しい重厚さと端正な気品を併せ持った。

フロントに配置された動力部には、同社伝統の水冷90度V型8気筒DOHCユニットを採用。排気量は4.2L(4,136cc・255ps)と4.9L(4,930cc・280ps)の2種類が用意され、それぞれ4基のウェーバーキャブレターによって燃料が供給された。トランスミッションにはZF製の5速マニュアル変速機、もしくはクライスラー製の3速オートマチック変速機が組み合わされ、滑らかなトルク特性を活かして後輪を力強く駆動した。

シャシーには、前後ともにダブルウィッシュボーン式による4輪独立懸架サスペンションを採用。後部には左右それぞれにツインスプリングとダンパーが配され、高速巡航時の優れた直進安定性と快適な乗り心地を高水準で両立させた。車内は上質な天然皮革と贅沢なウッドパネルで覆われ、イタリア大統領の公式送迎車にも選定されるなど、国家元首の乗用に耐えうる極上の移動空間が構築された。

モデル末期の1986年には最高級仕様の「ロワイヤル」へと車名が改称され、富裕層向けに内装の贅を尽くした完全受注生産へと移行した。このロワイヤルを含め、1990年までにシリーズ累計で2,100台以上が生産された。経営危機に直面していたブランドを再建へ導き、イタリアンラグジュアリーサルーンの規範を確立したモデルである。

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