2002年に発表された「フォルクスワーゲン ゴルフ R32」は、4世代目ゴルフを基盤に開発された高性能スポーツフラッグシップである。従来のGTIを上回る圧倒的な動力性能と操縦安定性を掲げ、フォルクスワーゲンのレーシング部門(のちのフォルクスワーゲンR)が主導して開発。専用の大型フロントエアインテークやサイドスカート、後部バンパーの左右両端に配された大径エキゾーストパイプを備え、控えめながら力強い独自の存在感を確立した。
動力部には、排気量3,189ccの狭角V型6気筒「VR6」ユニットを横置き配置で搭載。24バルブ化されたシリンダーヘッドを備え、241psのパワーと320Nmのトルクを発生させた。駆動系にはハルデックス製カップリングを用いた電子制御式4WDシステム「4MOTION」を組み合わせ、強大な動力を路面へ確実に伝達。標準の6速マニュアル変速機に加え、2003年には量産モデルへ本格投入された2系統クラッチの自動変速機構(DSG)仕様も追加された。
足回りには前輪マクファーソンストラット式、後部には標準ゴルフのトーションビームに代えて独立懸架サスペンションを採用。車高を20mm低めた専用強化スプリングやダンパー、太径スタビライザーを装備し、優れた回頭性と高速域での接地性を両立させた。制動装置には青色塗装のキャリパーと大径ディスクを備え、車内にはケーニッヒ製スポーツシートやアルミ加飾が奢られるなど、プレミアムスポーツとしての機能美が追求された。
当初予定されていた5,000台の限定生産枠は瞬く間に完売し、世界市場からの強い要望に応えて欧州および北米向けに約1万2,000台が製造された。実用ハッチバックに大排気量マルチシリンダーと高度な全輪駆動を組み込むという手法は市場に大きな衝撃を与え、単なるホットハッチの枠組みを超えた高性能コンパクトカテゴリーの指標として、現代に続く「R」シリーズの礎を築いた。

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