フォルクスワーゲン ゴルフ VR6(1992-1998 ドイツ)

フォルクスワーゲン

「ゴルフ VR6」は、1992年に3代目ゴルフのフラッグシップとして登場したハイパフォーマンス仕様である。それまでのホットハッチの常識が直列4気筒を搭載するのに対し、当時としては斬新な6気筒ユニットを採用。通常のスポーツモデル「GTI」とは一線を画す、大排気量のゆとりを持つプレミアムなグランツーリスモとしての地位を確立した。ボディタイプはグローバル展開において、スタイリッシュな3ドアと実用的な5ドアのハッチバックが用意されている。

この贅沢なコンセプトを可能にしたのが、最大の特徴である狭角V型「VR6」エンジンである。「VR」とは、ドイツ語で直列を意味する「Reihenmotor」とV型を組み合わせた「短縮直列エンジン」の頭文字に由来する。V型でありながらバンク角はわずか15度と極めて狭く、1つのシリンダーヘッドで左右のバンクを覆う構造を持つ。この設計により直列4気筒並みのコンパクトさを達成し、ゴルフの限られたエンジンルームへの横置き配置を可能にしたエンジンであった。標準仕様の2.8リッターから最高出力174馬力を発揮し、多気筒ならではの滑らかな回転フィールと官能的なエキゾーストノートを提供した。

さらに1993年には、ビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDシステムを搭載する「VR6 シンクロ」が追加された。このシンクロ仕様では、駆動ロスの相殺とパフォーマンス向上のため、エンジン排気量が2.9リッターへと拡大され、最高出力は190馬力へとスープアップされている。この4WDモデルはハッチバックに留まらず、ステーションワゴンの「ヴァリアント」にも展開され、全天候型の超高性能ワゴンとしてコアなファンを魅了した。

フロントの重量増に伴うハンドリングの割り切りは必要だったが、クラスを超えた高速巡航性能と上質な装備は、現代の「ゴルフ R」へと至る高性能4WDハッチバックの礎となった。初代ゴルフVR6は、小さな車体にプレミアムな多気筒の価値を詰め込むことで、コンパクトハッチに新しい流れをもたらした。

フォルクスワーゲンが開発した狭角V型エンジン「VR6」は、単体での熟成にとどまらず、VR構造を片バンクとしてV型に配置する「W型エンジン」の基礎となった。のちのパサート等に搭載されたW8は狭角V型4気筒バンク2基、ベントレー コンチネンタルGT等のW12はVR6を2基組み合わせた構成である。その極致がブガッティ ヴェイロンやシロンに載るW16であり、狭角V型8気筒バンク2基にクワッドターボを組み合わせ、1,000馬力超を叩き出す心臓部として結実した。ハイパーカーの頂点には、VR6で培われた技術が脈々と受け継がれていたのである。

これらの関係はエンジンブロックを見るとわかりやすい。1つのエンジンブロックに狭角のV型エンジンを内包するVR6。VR構造の片バンクをV型配置したものがW型エンジン。

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