フォルクスワーゲン up!(2011–2023 ドイツ)

フォルクスワーゲン

2011年に登場したフォルクスワーゲン「up!」は、同社の新世代スモールカー群「ニュー・スモール・ファミリー」の中核を担うAセグメントのコンパクトカーである。全長わずか3.54mほどの極小ボディでありながら、ホイールベースを四隅に極限まで広げたパッケージングにより、大人4人が快適に乗車できる広大な室内空間を確保。高剛性ボディと高い安全性を備え、現代における「国民車」のあり方を提示した。

当初のup!コンセプトでは水平対向4気筒をリアに搭載するRR方式を採用していたが、市販に際してはオーソドックスなFF方式へと改められた。エンジンは、新開発の1.0リッター直列3気筒DOHC12バルブ(最高出力60馬力/75馬力)を採用。軽量な車体との組み合わせにより、優れた燃費性能と軽快な走りを両立した。トランスミッションには5速MTのほか、構造がシンプルで軽量なシングルクラッチ式の5速ASGが用意され、都市部における扱いやすさと高速走行時の高い静粛性・安定性が高く評価された。

シンプルでありながら質感の高いインテリアや、スマホと連携するインフォテインメントシステムなど、機能美を追求した設計も大きな魅力であった。また、先進安全装備である低速域追突回避・被害軽減ブレーキを同クラスでいち早く導入するなど、安全面においても一切の妥協を排した。モデルライフの後半には、走りの楽しさを追求したスポーツモデル「up! GTI」も追加設定され、バリエーションの幅を広げた。

2023年の生産終了に至るまで、up!は無駄を削ぎ落とした機能美と、ドイツ車らしい質感の高い走りで親しまれた。かつての「ビートル」や初代「ゴルフ」に通ずるベーシックカーとしての高い完成度と扱いやすさを現代に蘇らせた同車は、フォルクスワーゲンが培ってきた小型車づくりの技術と哲学を結実させた一台であった。

フォルクスワーゲン up!の登場にあわせ、同グループ内のブランドからも兄弟車が投入された。チェコのシュコダが手掛けた「シティゴ」と、スペインのセアトによる「Mii」である。両車は「ニュー・スモール・ファミリー」の共通プラットフォームや1.0リッター直3エンジンを踏襲しつつ、独自のフロントマスクや専用意匠を採用。グループの総合力を活かした多ブランド展開により、欧州Aセグメント市場で高い存在感を発揮した。

2018年に追加された「up! GTI」は、熱狂的なファンの声に応える形で誕生したスポーツモデルである。最大の話題となったのは、そのコンセプトが「初代ゴルフGTI(Mk1)」の再来と評された点にある。1tを切る軽量な車体に、最高出力115馬力、最大トルク200Nmを発揮する1.0リッター直列3気筒ターボエンジンを搭載し、6速MTとの組み合わせにより、0-100km/h加速8.8秒、最高速度196km/hという本格的な動力性能を実現した。専用ローダウンサスペンションやタータンチェック柄のシートなどを備え、小粒ながらも「GTI」の名に恥じない仕上がりとなっていた。

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