1998年に欧州市場へ投入された「フォード フォーカス」は、エスコートの後継として開発されたCセグメントの小型実用車である。ドイツ・ケルンとイギリス・ダントンの両拠点が協調して開発を推進し、ドイツやスペインなどの工場で生産された。幾何学的なエッジと有機的な曲面を融合させた「ニューエッジ」デザインを採用。三角形をモチーフとした鋭いヘッドライトや、後部ピラー上部に配された縦型テールランプなど、斬新な造形によって従来のコンパクトカー像を一新した。
車台には新開発のC170プラットフォームを採用。前輪にマクファーソンストラット、後輪に「コントロールブレード」と呼ばれる独立懸架式マルチリンクサスペンションを投入した。薄型トレーリングアームと複数のラテラルリンクを組み合わせ、前後と横方向の入力を分離して処理する設計により、優れた追従性と俊敏な回頭性、上質な乗り心地を両立。荷室空間の犠牲を最小限に抑えつつ、同クラスの動的質感における新たな規範を確立した。
パワーユニットには、排気量1.4リッターから2.0リッターの直列4気筒「ゼテック」ガソリンやディーゼルを幅広く設定。変速機には5速マニュアルおよび4速オートマチックを組み合わせた。後期にはコスワースが手掛けた2.0リッター自然吸気を積むスポーツ仕様「ST170」(173ps)を追加し、限定モデルとして高性能版の「RS」も設定。優れたボディ剛性と相まって、実用域から高速域まで正確な走行性能を発揮した。
優れた操縦性と独創的なパッケージングが高く評価され、1999年の欧州カー・オブ・ザ・イヤーおよび2000年の北米カー・オブ・ザ・イヤーを相次いで受賞。北米市場を皮切りに世界各国へ展開されるグローバルカーとして普及した。モータースポーツにおいては世界ラリー選手権(WRC)に参戦し、コリン・マクレーらの操縦で数々の勝利を記録。実用車としての高い完成度と競技実績を兼ね備え、欧州フォードの歴史を刷新した重要モデルである。

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