ルノー 21 ターボ(1987-1994 フランス)

ルノー

ルノーが1987年に発表した「21(ヴァンテアン)ターボ」は、同社の中核セダンをベースに開発された高性能スポーツサルーンである。1970年代後半からF1で先駆者として培ったターボ技術が市販車へフィードバックされたモデルであり、当時市場を牽引していたBMW M3(E30)やメルセデスベンツ 190E 2.3-16といったドイツ製プレミアムスポーツサルーンに対し、ほぼ半額に近い車両価格でありながら互角以上の最高速・加速性能を発揮。圧倒的なコストパフォーマンスを誇る高速ツアラーとして欧州で大きな注目を集めた。

ルノー21シリーズは排気量に応じてエンジンの横置きレイアウトと縦置きレイアウトが混在する特異な設計を採用していた。これは、当時のルノーに大トルクに耐えうる横置きトランスミッションが存在しておらず、排気量の大きなモデルには上級車「25(ヴァンサンク)」の縦置きパワートレーンを流用したためである。21ターボもエンジンは縦置きとなり、横置きエンジンモデルに比べてホイールベースが約60mm短い(横置き:2,660mm/縦置き:2,600mm)異例の車体構造を持つこととなった。

2.0リッター直列4気筒SOHCエンジンにはギャレット・エアリサーチ製T3ターボチャージャーと空冷インタークーラーを装備し、175馬力/27.5kgmを発生。最高速度227km/h、0-100km/h加速約7.4秒というクラストップレベルの俊足を誇り、3,000rpm付近から炸裂する強烈な加速フィールから、日本市場では「フレンチロケット」の愛称で親しまれた。1989年には強大なトルクを確実に路面へ伝達するため、フルタイム4WDシステムを備えた「クアドラ」が追加され、全天候下での走行安定性がさらに高められた。

実用的な4ドアセダンでありながらスポーツカーに匹敵する動力性能を備えたルノー21ターボは、ターボ技術のルノーを象徴するフラッグシップスポーツサルーンとして、後継のラグナが登場する1994年まで生産された。

1988年2月4日、ルノー21ターボはスウェーデンの凍結湖・ホルナヴァン湖において、氷上世界最高速度記録の樹立に挑んだ。ドライバーにはフランス人レーサーのジャン=ピエール・マルシェが起用され、市販車をベースに出力を約250馬力まで引き上げ、空力特性を最適化した車両が投入された。極寒の滑りやすい氷上という過酷な条件下で、スノータイヤ装着時に246.926km/h、特製スパイクタイヤ装着時には250.610km/hを記録し、当時の氷上世界最高速度記録を達成。同車が持つポテンシャルの高さと優れた高速安定性を世界に実証した。

1989年に追加された「クアドラ」は、21ターボの性能を全天候型へと進化させたフルタイム4WDモデルである。通常時の前後トルク配分を65対35とするプラネタリーギア式センターデフとビスカスカップリングを採用し、駆動力を分散させることでFF特有のトルクステアを解消。さらに軽量なカーボンファイバー製プロペラシャフトや、駆動系を収める専用設計のリア独立懸架サスペンションを備え、雨天や高速域における走行安定性を飛躍的に高めた。

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