ジャガー XJ220(1992-1994 イギリス)

ジャガー

1992年に登場した「ジャガー XJ220」は、ジャガーと英TWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)の合弁会社「ジャガースポーツ」が開発したスーパーカーである。1988年の英国国際モーターショーで披露されたコンセプトカーの反響を受けて市販化を決定。車名は公称目標最高速度「時速220マイル(約354km/h)」に由来し、グループCレーシングカー譲りの高度な空力技術やアルミハニカムモノコック車体が惜しみなく投入された。

量産化の最大の転換点となったのがパワートレーンの見直しである。当初予告された6.2リッターV12自然吸気エンジンと4WDの組み合わせは、重量増や冷却・排ガス対策の課題から断念され、後輪駆動と3.5リッターV型6気筒DOHCツインターボ「JV6型」への換装が断行された。この心臓部は、WRCグループBで活躍した「MGメトロ6R4」に搭載されていた「V64V型」エンジンを直接のルーツとしている。TWRがその製造権を取得し、グループCカーの「XJR-10」や「XJR-11」用にターボ過給化した技術をロードカー向けに最適化したものであった。

前席背後のミドシップに収まるこのユニットは、最高出力542bhp、最大トルク644Nmを発生。1992年にはイタリアのナルド試験場にて、触媒を外した仕様で時速217.1マイル(約349.4km/h)を記録し、当時のギネス認定で世界最速の市販量産車となった。目標の220mphにはわずかに届かなかったものの、触媒付きの標準仕様でも時速212.3マイル(約341.7km/h)、0-60mph加速3.6秒という圧倒的な動力性能を実証した。

しかし、ジャガー伝統の豪奢なV12からラリーカー用をルーツとするV6ツインターボへの変更は、多くの顧客から強い反発を買った。同時期のバブル経済崩壊も重なって大量の予約キャンセルと訴訟問題に発展し、当初予定された350台の生産枠に対し、最終的な累計生産台数は約280台にとどまり1994年に終了した。商業的には波乱に満ちた生涯を送ったものの、レース直系の俊敏な心臓部と世界最高速の記録によって、1990年代を象徴する伝説的スーパーカーとして歴史に刻まれている。

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