S12型シルビア/ガゼールの北米輸出仕様である「200SX」に、1987年モデルとして追加された最上級グレードが「200SX SE V6」である。北米市場で強い支持を得ていた大排気量マルチシリンダー車のニーズに応え、コンパクトなFRハッチバックボディに迫力あるV6エンジンを搭載したプレミアムスポーツクーペとして誕生した。
パワートレーンには、セドリック等で定評のあった3.0リッターV型6気筒SOHC「VG30E型」エンジンを採用。最高出力160馬力を発生し、低回転域から余裕あるフラットなトルクを発揮した。巨大なV6ユニットを収めるため、フロントボンネットには特徴的なパワーバルジが設けられ、サスペンションやブレーキ、駆動系も専用に強化されていた。
装備面でも最上級グレードにふさわしい充実ぶりが図られた。他のグレードが4穴ハブであったのに対し、V6モデルでは足回りが5穴ハブ化され、専用のアロイホイールや大径タイヤを装着。室内には上質なスポーツシートや高機能オーディオが標準装備され、大排気量NAエンジンがもたらす余裕の走りと相まって、北米のハイウェイを長距離快適に巡航できる本格GTカーとして仕立てられた。
200SX SE V6は、日本国内には導入されなかった「V6エンジンを積んだシルビア」という稀有な存在であり、S12型の最終期を飾るフラッグシップとして特別な輝きを放った。

その本性はグループAホモロゲーションモデルだった
200SX SE V6は、WRC(世界ラリー選手権)グループA参戦に向けたホモロゲーションモデルという重要な側面を持っていた。1987年のグループA規定への移行に伴い、それまで活躍していたグループBマシンの「240RS」が出走不可能となったためである。日産はホモロゲーション規定(年間5,000台の生産)を確実にクリアするため、北米で高い需要が見込めるS12型シャシーに3.0リッターV6「VG30E型」エンジンを組み合わせた「SE V6」を開発・市販した。

日産車として最後、そしてFR車最後のWRC総合優勝という金字塔
実戦では急速に4WD化が進む中でFR駆動というハンデを負いつつも、信頼性の高いVG30E型エンジンとタフなボディを武器に過酷な耐久ラリーで善戦。1988年・1989年のサファリラリーで2年連続総合2位を獲得したほか、1988年のアイボリーコーストラリーでは見事に総合優勝を飾った。これが日産にとってWRCにおける最後の勝利であり、同時にWRC史上でFR車が獲得した最後の勝利として金字塔を打ち立てた。この実戦で得られた経験は、後に登場する本格4WDラリーカー「パルサー GTI-R」へと引き継がれていくこととなる。


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