ルノー 12(1969-1980 フランス)

ルノー

1969年のパリ・サロンで発表された「ルノー 12」は、「プロジェクト117」のもと、フランス本国のみならず世界規模での生産・普及を見据えて開発された実用小型ファミリーカーである。過度な先進技術よりも堅牢性と経済性を最優先とし、発展途上国の過酷な環境にも適応する世界戦略車として企画された。外観には、後方へ向けて緩やかに傾斜するルーフと切り落とされたようなトランクを組み合わせた「アロープロファイル(矢印型)」と呼ばれる独自のウェッジ基調デザインが与えられた。

駆動方式には前輪駆動を採用。従来のルノー 16では変速機を車軸前方に配する縦置き構成をとっていたが、製造コストの抑制と居住空間の最大化を図るため、エンジンを前車軸の前方に配置する縦置きレイアウトへと改められた。動力部には、実績ある排気量1,289ccの水冷直列4気筒OHV「クレオン・フォンテ」ユニットを搭載。54psのパワーを発揮し、4速マニュアル変速機との組み合わせにより、日常領域での扱いやすさと高い経済性を両立させた。

足回りには前輪ダブルウィッシュボーン式、後部にリジッドアクスルを採用し、悪路での耐久性と快適な乗り心地を確保。車体展開では、基幹となる4ドアセダンに加え、1970年には高い積載能力を誇る5ドアステーションワゴン「ブレーク」を追加。さらに商用バン仕様も用意され、多様な実用需要に応えた。なお、高性能版として「ゴルディーニ」も設定されたが、実用性を重んじる幅広いボディバリエーションこそが本系統の普及を大きく後押しした。

フランス本国では1980年まで生産され、派生モデルを含む世界累計生産台数は400万台以上に達した。さらに世界各地で広範な現地生産が展開され、ルーマニアではダチア 1300シリーズとして2000年代初頭まで長期にわたり製造されたほか、ブラジルやトルコ、オーストラリア等でも生産が継続された。優れた実用性と耐久性を徹底的に追求した多面的な車体構成は、世界各国のモータリゼーションを支えた実用車として確固たる足跡を残した。

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