フォード シエラ XR 4×4(1985-1993 西ドイツほか)

フォード(欧州)

1985年のジュネーブ・モーターショーで発表された「フォード シエラ XR 4×4」は、空力ボディにフルタイム四輪駆動を組み合わせた高性能サルーンである。後輪駆動の高性能モデル「XR4i」の実質的な後継として誕生し、悪天候下でも確実なトラクションと高速巡航性能を発揮する全天候型グランドツアラーとして欧州市場へ投入された。生産は西ドイツのケルン工場に加え、ベルギーのヘンク工場などでも並行して行われた。主要市場である英国などでは実用的な5ドアハッチバックを中心に展開され、1990年の改良時には4ドアセダン版(サファイア)も追加されている。

また、左ハンドルの欧州大陸向けには、旧XR4iと同形式の車体を持つ3ドアハッチバック仕様も正式に用意されていた。この3ドア仕様は、旧XR4iのクォーターピラー付き変形ウィンドウではなく、通常のシエラ3ドアと同様の大型一枚ガラスを採用したすっきりとした側面意匠を持っていた。しかし、1986年に同じ3ドア車体を用いる競技ベースの高性能版「RSコスワース」が登場したことで販売上の立ち位置が重なり、3ドアのXR 4×4はごく少数の生産にとどまる極めて希少な存在となった。

駆動機構には、FFディベロップメンツ社と共同開発したフルタイム4WDを採用した。遊星歯車式センターデフにビスカスカップリングを組み合わせ、前後トルク配分を34対66に設定。後輪駆動に近い自然な操縦感覚を残しながら、前輪へ的確に駆動力を分配する高度な設計であった。後輪側デフにもビスカスLSDが組み込まれ、滑りやすい路面での高い走破性と姿勢安定性を確立している。

動力源には、当初2.8リッターV型6気筒「ケルン」エンジンが搭載された。この初期型ユニットはボッシュ製の機械式連続燃料噴射システム(Kジェトロニック)を備え、150psを発生した。1989年には排気量を2.9リッターへと拡大するとともに、電子制御燃料噴射(フォードEEC-IV)へとシステムを刷新。低中速域のトルク特性を改善して扱いやすさを大きく向上させた。XR 4×4の優れた四輪駆動レイアウトは、のちに登場するグループA競技車両「RSコスワース 4×4」の基盤ともなり、シエラの生産が終了する1993年まで確固たる地位を保ち続けた。

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