1988年秋に発表された「ポルシェ 911 カレラ4(964型)」は、伝統の911を新世代へと進化させたフルタイム4WDスポーツカーである。959で培われた電子制御技術を量産モデルへと導入し、新世代964型の先陣を切る形でまずカレラ4から市場へ投入された。伝統的な後輪駆動モデルである「カレラ2」の登場は約1年遅れの1989年秋(1990年モデル)であり、4WDを旗艦技術として先行発売した点に当時のポルシェの強い意志が表れていた。従来のスタイリングを色濃く残しながらも、車体骨格の大部分が刷新されている。
外観は従来のシルエットを踏襲しつつ、可動式後部スポイラーや一体成型のバンパーによって空力性能を大幅に改善。車体構造においては、前輪へ駆動力を伝達するプロペラシャフトや制御配管を通す必要から、室内中央を走るセンタートンネルが太く高く盛り上がった形状となった。さらに前部にディファレンシャルギアを収めるため、フロント荷室のフロア面もカレラ2に比べて高く底上げされており、4WD化に伴う空間設計の明確な相違点となっていた。
心臓部には新設計の3.6リッター空冷水平対向6気筒「M64型」ユニットを車体後部に搭載。ツインプラグ化によって燃焼効率を高め、自然吸気ながら250psを発生した。駆動システムにはプラネタリーギアを用いたセンターディファレンシャルを組み込み、前後31対69を基本とするトルク配分を実現。電子制御の油圧多板クラッチによって前後および後輪の差動を緻密に自動制御し、卓越した直進安定性と全天候型の走破性を確立した。この複雑かつ堅牢な機構は高い安全性を誇ったものの重量増や構造の肥大化を招き、次世代の993型カレラ4では軽量・簡潔なビスカスカップリング式へと変更されることとなる。
足回りには従来のトーションバーに代えてコイルスプリング式サスペンションを採用し、路面追従性を大幅に向上させた。先進のハイテク技術を注ぎ込んで誕生した964型カレラ4は、旧来のRR特有の気難しさを解消し、誰もが高性能を享受できる新時代のスポーツカー像を確立。4WD機構の変遷における過渡期の到達点として、ポルシェの近代化を決定づけた重要な存在である。
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