ポルシェ 911 SC/RS(1984 西ドイツ)

ポルシェ

1984年に登場した「ポルシェ 911 SC/RS(954型)」は、世界ラリー選手権(WRC)や中東ラリー選手権などのグループB規定へ適合させるために開発された競技用ホモロゲーションモデルである。当時、タバコブランドであるロスマンズの強力な支援を取り付けていたラリーマネージャーのデイビッド・リチャーズは、国際ラリーの舞台で勝利を収めるため、ポルシェ首脳陣に高性能ラリーマシンの開発を強力に働きかけた。これを契機として、同ラリープログラムを運営・統括する実戦部隊としてリチャーズ自らが創設した組織こそが、後にモータースポーツ界で名を馳せる「プロドライブ」であった。生産台数は公認車両(エボリューションモデル)としての最低要件を満たす20台に加え、開発用試作車の1台を含む合計21台が特別に製造された。

車体構造は911ターボ用のワイドボディを基本骨格とし、過酷なラリー走行に耐えうる剛性とトレッドの拡大を確保。その一方で徹底した軽量化が追求され、前部荷室フードや左右ドアパネルにアルミニウム素材を採用し、前後バンパーや後部の専用大型ウイングスポイラーには軽量なFRP素材を惜しみなく導入した。さらに窓ガラスには薄型グレージングを奢り、遮音材や後部座席、快適装備を徹底的に排除した結果、車両重量は約960kgという驚異的な数値を実現。大型の後部スポイラーは高速域における強力なダウンフォースを生み出し、空力安定性の向上にも寄与した。

心臓部には3.0リッター空冷水平対向6気筒ユニットを搭載。クーゲルフィッシャー製機械式燃料噴射装置やツインプラグ点火システムを組み合わせ、自然吸気ながら市販仕様で250ps、実戦用コンペティション仕様では約300psを発生した。足回りには強化トーションバーやビルシュタイン製ダンパーを組み込んだほか、ブレーキにはレーシングマシンの917から技術を受け継いだ強靭なブレーキキャリパーを採用。砂利道や荒れた舗装路が連続する過酷なラリーステージにおいても、確実な制動力と高い耐久性を発揮した。

実戦に投入された911 SC/RSは、中東ラリー選手権を席巻して数々の勝利を記録したほか、欧州選手権やWRCのターマックイベントでも強烈な存在感を示した。四輪駆動が主流となりつつあった過激なグループB時代にあって、後輪駆動レイアウトの限界を突き詰めた最高峰のラリーカーとして歴史に名を刻む。熱意あるリチャーズの働きかけからプロドライブ創設の原点となり、ポルシェのモータースポーツ史を語る上で欠かせない伝説のアイコンとなっている。

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