2012年に北米市場で発売された「サイオン FR-S」は、トヨタが北米で展開していた若年層向けブランド「サイオン」から投入された2ドアスポーツクーペである。トヨタとスバルの共同開発によって誕生した「トヨタ 86」および「スバル BRZ」の兄弟車にあたり、車名は「Front-engine」「Rear-wheel drive」「Sport」の頭文字に由来。エントリースポーツとして企画され、単一グレードによる明朗な価格設定(ピュアプライス戦略)を軸に展開された。
動力部には、スバルが開発した低重心な排気量1,998ccの水平対向4気筒DOHC「FA20型」を採用。トヨタの筒内直接噴射と吸気ポート噴射を併用する直噴技術「D-4S」を導入し、自然吸気ながらリッターあたり100psに達する(200ps/7,000rpm、20.9 kgm/6,600rpm)を発生した。変速機にはショートストロークの6速マニュアル、およびステアリングパドルを備えた6速オートマチックを設定し、トルセンLSDを介して後輪を駆動した。
シャシーには高張力鋼板を効果的に配した軽量高剛性ボディを採用。足回りには前輪マクファーソンストラット、後輪ダブルウィッシュボーンを組み合わせ、兄弟車のBRZに対して前輪スプリングを柔らかく、後輪スプリングを硬めに設定する独自の減衰特性が与えられた。これにより旋回初期の回頭性を高め、アクセル操作による後輪の挙動変化を積極的に楽しむオーバーステア寄りの操縦性が追求された。
手頃な価格帯と意のままに操れる素直な運動特性により、北米の若年層や入門層から高い支持を獲得。2016年にサイオンブランドの廃止が決定されたことに伴い、同モデルの名称は2017年モデルより「トヨタ 86」へと統合され、約4年間の単独ネームプレートに幕を下ろした。北米市場における小型後輪駆動スポーツの復権を担い、ブランドの最後を飾る象徴的な存在として確固たる足跡を残した。

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