フォルクスワーゲン ラリーゴルフ(1989-90 ドイツ)

フォルクスワーゲン

1989年に発表された「ラリーゴルフ(Rallye Golf)」は、WRCのグループAカテゴリー参戦を目的としたホモロゲーションモデルである。当時、絶対王者であったランチア デルタに対抗すべく、ゴルフIIをベースに開発された。生産はドイツの本社工場ではなく、ベルギーのブリュッセルにある工場で行われ、参戦規定を満たすための5,000台が製造された。実用車としての基本骨格を維持しつつ、競技での勝利を見据えた技術が随所に盛り込まれたモデルである。

エンジンには、「Gラーダー」と呼ばれるスクロール式の容積型スーパーチャージャーを搭載している。直列4気筒SOHCエンジンの排気量はターボ係数(1.7)を乗じた際に3,000cc未満となるよう、標準の1,780ccから1,763ccへとわずかに縮小。最高出力160馬力、最大トルクは22.9kgmを発生させた。過給機が低回転域からリニアにトルクを立ち上げる特性を持ち、全域で扱いやすく力強い動力性能を確保している。これにビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDシステム「シンクロ」を組み合わせ、優れた走行安定性とトラクション性能を両立させていた。

外装における最大の特徴は、ワイドトレッド化に対応して大きく張り出した「ブリスターフェンダー」である。また、ゴルフの象徴である丸型から変更された専用の長方形プロジェクターヘッドライトが、標準モデルとは一線を画す精悍な表情を演出した。室内にはホールド性に優れたレカロ製シートが装備され、競技車両のベースとしての機能性を備えつつ、フォルクスワーゲンらしい堅実な質感も維持されていた。

実戦ではフロントヘビーな重量配分などが影響し、期待されたほどの戦果を残すことはできなかった。しかし、独自の過給システムと4WDを統合した技術的試みは、当時の同社における最高峰のエンジニアリングを反映したものであった。限定販売ゆえに希少な存在となったが、ゴルフIIの歴史におけるグループAホモロゲーションモデルとして独自の地位を保ち続けている。

タイトルとURLをコピーしました