2015年10月の第44回東京モーターショーで初公開された「トヨタ S-FR コンセプト」は、86の下に位置づけられるエントリークラスの小型スポーツとして企画されたスタディモデルである。車名は「Small」「Front-engine」「Rear-wheel drive」の頭文字に由来。意のままに操る楽しさを幅広い層へ提供することを主眼に開発され、丸みを帯びた造形とクラシカルなプロポーションを融合させ、次世代のスポーツカー愛好家を広げる意図が込められた。
車体寸法は全長3,990mm、全幅1,695mm、全高1,320mm、ホイールベース2,480mmとされ、日本の5ナンバー枠に収まるコンパクトな2+2クーペのパッケージングを採用。大きな開口部を持つ楕円形のフロントグリルや円形ヘッドランプにより、威圧感を排した表情を形成した。ロングノーズ・ショートデッキの佇まいを基本としながら、滑らかなルーフラインによって軽快感と凝縮感を強調した外観が構築された。
前車軸の後方にエンジンを収めるフロントミドシップ配置を採用し、良好な前後重量配分と低重心化を追求。変速機には6速マニュアルを組み合わせ、後輪を駆動する。足回りには4輪独立懸架が与えられ、素直な操舵応答性と軽快な回頭性を目指した。なお、発表時に排気量や諸元の数値は公表されず、絶対的な速度よりも車との一体感や運転の楽しさを最優先する開発思想が反映された構成となっていた。
手頃な価格帯での市販化を期待する声が国内外で高まり、翌2016年1月の東京オートサロンでは大型空力部品やワイドフェンダーを備えた「TOYOTA S-FR Racing Concept」も披露された。最終的に量産化へは至らなかったものの、軽量コンパクトなFRスポーツの可能性を提示した意欲作として、現代のスポーツカー史において独自の存在感を放っている。

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